松岡享子さんの『子どもと本』(岩波新書)のなかに、こんな話が出てきました。 国民学校の最後の一年余りは、親や先生たちにとってはたいへんな時期だったと思いますが、わたしは、よい先生に恵まれて幸せでした。担任のH先生は、よく作文を書かせました。あるとき「おかあさん」という題が出ました。わたしが書いたのは、おかあさんというものはありがたいものだ、おかあさんのいない人はどんなにかつらいだろうというものでした。それまでの作文は、戦地の兵隊さんを思い、わたしたちも銃後の守りを固くし、よく勉強して、はやく大きくなり、男ならば兵隊さんに、女ならば看護婦さんになってお国のために尽くしたい、と書くのが決まり、つまり、要求されているように書く、建前を書くものだと思っていましたから。 ほかにも同じようなことを書いた人が大勢いたのでしょう。先生は、あなたたちに、おかあさんの居ない人の気持ちがほんとうにわかるか? わ
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