南海 ゲーデルの仕事の意味を知るためには,もう少し19世紀末の数学に現れた,数学の基礎に関する諸問題を知らねばならない.これを対角線論法という視点で見ていこう. 集合論におけるカントールの対角線論法と,そのひろがりを見てみよう. 『数学対話』-「高校数学の土台」-「実数とは何か」で,有理数の集合は自然数の集合と一対一の対応を作ることができるが,実数の集合には自然数との一対一対応が存在しないことを示した.これは偉大な発見だった.無限といっても同じではなく,段階があることをはじめて見いだした. ここで「実数の集合には自然数との一対一対応が存在しない」を改めて考えよう.二つの集合との間に一対一対応が存在するとき,二つの集合の濃度が等しいといい,と書く.有限集合の場合はは集合の要素の個数そのものとする. 集合が集合のなかに埋め込める,つまりの部分集合との間に一対一対応が存在するとき,濃度の関係はで