題名:ジュピターが集めた、熱いSF的視線 <リード> この映画の誕生過程には、当時の世にあった“SFへの情熱”の影が焼きついている。 国産初の本格的SF映画誕生への期待──それは周囲状況と、どう関連していたのだろうか? <本文> ●小松左京とSF映画 本作で一番重要なのは、実は作品そのものではなく、「なぜあのとき『さよならジュピター』というSF映画が必要とされたか? どうしてあれだけ話題になったのか?」という部分ではないか。それを周囲状況を中心に確認したい。 そもそも小松左京がSF作家として出発するきっかけにも、SF映画が大きく関係していた。1961年、早川書房の第1回S-Fマガジンコンテストにおいて選外努力賞として『地には平和を』が入選、これがデビューの契機となった。このコンテストには東宝も出資し、選者に『ゴジラ』のプロデューサーとしても知られる田中友幸が名を連ねている。換言すれば、小松