若ノ鵬の姿を見ていると胸が痛む。解雇は厳しいが、今の相撲協会の現状を考えると、やむをえないだろう。けれど、今の若ノ鵬を責める気にはとてもなれない。むしろ、相撲協会の態度はこれでいいのか、と疑問と怒りがふつふつと湧きあがってくる。 若ノ鵬はまだ20歳である。日本に来たときは17歳だ。責任を持って預かったはずの若者を、きちんと教育しきれなった責任を忘れて、切って捨てて放り出してよいのだろうか? たとえ相撲界に復帰させることは難しくても、何らかの立ち直りの措置を施すのが、疑似家族である部屋の親方、そしてそれをサポートする協会の役割ではないのか? 火の粉を振り払うような真似をするのは、あまりに冷酷で、無責任で、軽薄すぎやしないか? それが、教育を担ってきた大人のすることか? ソ連解体後のロシア社会の荒廃ぶり、特に、若ノ鵬の出身地である北オセチア共和国の、チェチェン戦争等による混乱が、彼にどのような