* 性的あるいは暴力的な描写は一切ありません。 また本作品はフィクションであり実在の人物とは関係ありません。 それは雲ひとつない満月の夜のことだった。 工藤春美くどうはるみは、その月と街灯が照らす明るい夜道を歩いていた。 足には青いジーンズ、上半身にはTシャツの上にゆったりとした厚手の黒カーディガンを羽織り、美容院で整えたばかりのセミロングの茶髪を揺らしていた。まだ10月の初旬であるにもかかわらず冷たく感じる夜風は完全に秋を感じさせるもので、春美はもう少し暖かい格好をしてくればよかったと少しだけ後悔した。 一般論で言うならこんな世の中に女一人で出歩くのは危険かもしれないが、幸いなことにこのあたりは多くの街灯が設置されており街の治安もいいことで有名だ。少ない数とはいえ防犯カメラも設置されていることもあり、このあたりでいかがわしい犯罪があったという噂は聞いたことがない。もちろん過信は禁物だが。
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