#今週のお題「会いたい人」 残った毛糸玉 家は、穏やかな休息をむさぼり、深い静寂のなかに眠っていた。 午前2時0分。 夜中に気配を感じて目覚めたのは、眠りが浅いのだろうか、それとも何かを感じたのだろうか。 私はベッドから冷たい木肌のフロアに、はだしの足を下ろし、 ・・・・・そして、階下に向かった。 5月だというのに雨が降ったせいか、家全体の空気はひんやりしていた。 1階に下りると、そこでロッキングチェアにすわる母を見つけた。 午前2時2分。 母が木製の古いロッキングチェアに座り、器用に、忙しそうに、小さなシワの寄った指を動かして白いセーターを編んでいる。 ロッキングチェアにはいつもの軋み音はなかった。 静かな時に、ゆらゆらと形が揺らぐ。 母は無心に編み物をしている。 器用に編み棒を動かし、白い毛糸玉を紡いで、ケーブル編みの白いセーターを手際よく作りあげていく。 明かりの消えた部屋。 何度も