カンヌ国際映画祭(5月12~23日)を初めて取材した。世界最大の映画祭とされ、最先端の映画が集まってくる。受賞作の多くは世界の注目を集め、これまで日本でも多くが公開されてきた。しかし今回、閉幕直後に聞いた限りでは、賞を競った出品作19本のうち、日本で公開が決まっているのは日本映画「アウトレイジ」だけだという。作品の質が劣っているのではない。日本では、カンヌ出品作のような映画は観客が激減して商売にならなくなり、配給会社が買い付けを控えているのだ。数字の上では好調な日本映画界の、負の一面を目のあたりにした思いだ。 ◇分かりにくいが考えさせられる カンヌの作品には、娯楽性より社会性、芸術性を追求する作品が多い。大ヒットを狙うのではなく、じっくりと味わうタイプ。今回最高賞のパルムドールを受賞したアピチャッポン・ウィーラセタクン監督(タイ)の「ブンミおじさん」も、カンヌらしい作品だ。奇妙な展開の連続