ロシア軍がウクライナの侵攻を開始した2月24日、エストニア出身でアメリカ国籍を持つ指揮者パーヴォ・ヤルヴィ(59)はモスクワで、ロシア・ナショナル・ユース・シンフォニー・オーケストラとリハーサルをしていた。同ユースオケとの共演は、ヤルヴィがかねてから温めてきた計画だった。 1962年、まだソビエト連邦の一部だったエストニアの首都タリンに生まれたヤルヴィは、難しい決断を迫られた。公演をキャンセルして、ロシアの侵攻に抗議する意思を示すよう勧めてくる友人もいた。しかし彼は、「ユースオケの団員を失望させるわけにいかない」とモスクワに留まった。 ロシア軍の侵攻開始から2日後の2月26日、リヒャルト・シュトラウス作品の公演を予定通りおこなったヤルヴィは、翌27日にロシアを出国した。 ウクライナへの軍事侵攻のさなかにモスクワ公演を遂行したことに対し、彼はクラシック音楽界の一部から批判を浴びた。チューリッ