太陽系では唯一の「大気をもつ衛星」である、土星の衛星・タイタン。液体のメタンやエタンが流れる川や湖があり、生命の構成材料になる有機化合物も存在する。その謎と刺激に満ちた姿を紹介しよう。 この特別な衛星に接近した探査機は、現在までに1基だけだ。 タイタンは土星の最大にして最も奇妙な衛星だ。むしろ衛星というより、惑星のように見える。タイタンは太陽系では唯一の「大気をもつ衛星」であり、重力の大きさは地球と同じくらいだ。湖や川まである。ただし、タイタンの「水路」は、実際には液体のメタンとエタンでできている(液体なのは、表面が約マイナス179℃と極めて低温だからだ)。 おそらくタイタンで最も興味をそそられる点は、炭化水素などの有機化合物が存在していることだろう。それはつまり、この衛星には生命の構成材料になる物質があるということだ。しかし、タイタンに何らかの生命体が存在しているとしても、わたしたちの想