ミステリアスな顔立ちの美少女が、カメラのシャッターが切られるたびに、まるで突風でパラパラと本がめくれるかのようにめまぐるしく表情を変えていく。ツンとすました顔を見せたかと思うと、次の瞬間、子どものように満面の笑みを浮かべる。長い手足をひらひらと動かしながら飄々と身をひるがえしていく様は、紙のように軽く、薄っぺらく、それなのに、その奥にドロドロとした熱いものが隠されているような気もする。 未知数――映画の中の彼女を見て、インタビューで話を聞いてもなお、正直、彼女の全体像が見えてこない。それでいて...いや、だからこそ、スクリーンでもっと見てみたいという思いに駆られる。不思議な中毒性を持った少女。中島哲也監督が最新映画『渇き。』のヒロインに小松菜奈を選んだ理由が分かった気がする。 原作は2004年の「このミステリーがすごい!」大賞受賞の深町秋生の小説「果てしなき渇き」(宝島社刊)。成績優秀で優