こんな話がございます。 平安の昔の話でございます。 北斉の蘭陵武王は、武勇と悲劇の名将でございます。 数々の武功を立てながら、かえって疎まれてしまいまして。 最期は時の皇帝により自害に追い込まれたという。 我が朝で喩えるなら、さしずめ日本武尊命といったところでございましょう。 この蘭陵王でございますが。 実は文字通り別の顔を持っている。 ト、申しますのは。 世に比類なき美声と美貌の持ち主であったため。 配下の兵士たちがついうっとりとしてしまう。 また、敵からは軟弱者ト思われて見くびられる。 そこで考えたのが、仮面を付けて出陣することでございました。 その仮面というのがまた凄まじい。 野獣とも鬼神ともつかぬ形相で敵を威圧する。 蘭陵王がこの面を被って敵の軍勢をかいくぐり。 見事帰城した時には、味方の兵すら恐れ慄いたト申します。 さて、お話は本朝の平安京に舞い戻りまして。 都の一隅に、ある若い
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