真夏のうだるような日差しの下、ぼくは海沿いにある片田舎の町の片隅に立っていた。 目の前には長年の潮風にさらされ今にも傾きそうな小さな家がある。 「こんにちわー!」 できるだけ明るいトーンを心がけ、一度で誰が来たかを理解できるように玄関に向かって声を張った。 「開いてるよー」 隙間だらけの家の中から女性の声が響き、慌ただしい足音が近づいてきた。 「いらっしゃ、、、あら?ひとりかい?」 誰が聞いても明らかな様子で後半の声のトーンを下げながら、老齢の女性は答えた。 ぼくはそれにめげないように明るい声で答える。 「えぇ。仕事で近くまで来る予定があったものですから。せっかくなので。」 そういって洒落たロゴの入った紙袋を目の前に差し出す。 彼女が我が家に訪れると決まって買って帰る洋菓子店の袋だ。 何やら複雑そうな表情を一瞬見せたが、彼女の腕はすでに紙袋に伸びていた。 「せっかくだからお茶でも飲んでいき