ここまでお読みになって飲食業界に詳しい方は「この程度の話は革命とは言えないな」とお感じになるかもしれない。面白いのはここから先の話である。 従来型の飲食業態でのイノベーションはここから先、工業化に向かう。つまり、食材を大量仕入れして原材料費を下げ、セントラルキッチンで調理することで、調理に関わる原価を下げ、同時にお店の厨房ではアルバイトでも調理できるようにする。ほとんどの外食産業のチェーン店はこのように発展してきた。 『俺のフレンチ』が革命的なのは、これをやらないのである。 工業化を進める飲食チェーンの最大の弱点は本当においしい旬の食材を利用できないという点にある。なぜなら、本当においしい旬の食材は数量が揃わない。100店舗を超えるお店を抱えた瞬間に、チェーン店のメニューは商社を通じて大量に仕入れられる食材から選ぶしか選択肢がなくなってしまうのだ。 結果として、デニーズとサイゼリアと和民の