師匠の翻訳生活40周年の振り返り本だ。高校の英語教師時代から翻訳を始め、その後翻訳家として一本立ちして、現在までに訳書は200冊以上を超える。ミステリー、ハードボイルドファンならたぶん田口俊樹訳の本を一冊は読んだことがあるのではないだろうか。 その大家が翻訳生活40周年を振り返り、過去の自分の訳書を読み直して誤訳や試行錯誤について赤裸々に語っている。翻訳書の誤訳を指摘する本は世の中にたくさんあって、「こんな間違いをするなんて信じられない」という非難めいたものを感じることもあるのだが、この本はそもそも自分の訳した本を取り上げて自分で突っ込みをいれている。過去の間違いに対する懺悔と若き日の自分に対する忸怩たる想いが吐露され、そして少々の言い訳を聞かされることになる。軽妙洒脱な文章ゆえに、過去の間違いをユーモラスにくさす、というベテラン漫談家のような語り口に読んでいても口元が緩む。 今でも質問に