「『毒にも薬にもならない人畜無害の歌ばかり書いて』と自分はこれまで幾度も揶揄されてきた。だが、あえて言葉を返すのなら、皮肉ではなく事実として、何者も傷つけない無害の歌を書くなど、本来は途方もなく難しいことだ。」 いまだにTV局の玄関先で入館許可証の提示を求められるという、いきものがかりのリーダーは憤っている。いや、それほどでもないのかも知れないけれど。彼の志は高く、「泰然と、ただそこに在ることで、多くの人々の心に寄り添うことりできる桜のような歌をいつかかけないか」と願っている。彼が目指す高みは遙か彼方かもしれないが、しっかりとした目標を持って進んでいることがすごい。この本を読むと、彼の考えの深さが行間からあふれてくる。 音楽を作る人は、ストーリーテラーなのだと思う。水野君は祖母が残した手帳から、母から自分へ、そして自分の子どもへと続く物語を見いだす。父親が撮った写真から、幼い自分へ向けられ