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ブックマーク / kwsk23.hatenadiary.jp (12)

  • 犬は歌わないけれど - Life and Pages

    「『毒にも薬にもならない人畜無害の歌ばかり書いて』と自分はこれまで幾度も揶揄されてきた。だが、あえて言葉を返すのなら、皮肉ではなく事実として、何者も傷つけない無害の歌を書くなど、来は途方もなく難しいことだ。」 いまだにTV局の玄関先で入館許可証の提示を求められるという、いきものがかりのリーダーは憤っている。いや、それほどでもないのかも知れないけれど。彼の志は高く、「泰然と、ただそこに在ることで、多くの人々の心に寄り添うことりできる桜のような歌をいつかかけないか」と願っている。彼が目指す高みは遙か彼方かもしれないが、しっかりとした目標を持って進んでいることがすごい。このを読むと、彼の考えの深さが行間からあふれてくる。 音楽を作る人は、ストーリーテラーなのだと思う。水野君は祖母が残した手帳から、母から自分へ、そして自分の子どもへと続く物語を見いだす。父親が撮った写真から、幼い自分へ向けられ

    犬は歌わないけれど - Life and Pages
    ishiduca
    ishiduca 2021/12/25
    『毒にも薬にもならない人畜無害の歌ばかり書いて』と自分はこれまで幾度も揶揄されてきた。だが、あえて言葉を返すのなら、皮肉ではなく事実として、何者も傷つけない無害の歌を書くなど、本来は途方もなく難しい...
  • わが盲想 - Life and Pages

    この著者のことは高橋源一郎のラジオにゲストとして話していて、その声をまず知った。達者な日語で親父ギャグを連発。当に日語の運用能力が凄い。そして話を聞いていると、なんと眼が見えないのだと。しかも、日語でを書いたのだと、世の中には凄い人がいるものだとすっかり感心してしまった。 著者はスーダン人のモハメド・オマル・アブディンさん。12歳のときに視力を失う。それでもスーダンの大学に通っていたのだが、19歳の時、日から鍼灸の資格を身につけたい外国人の留学生を募集していることを知る。英語と点字の試験があり、英語はできたのだが、点字は全くダメだったらしいが、受験を決めてから学び始めてまだ1か月ということに試験管が驚き、その将来性を買われて(?)日に留学が決定した。 まずは板橋区の団体施設に受け入れられる。そして資格を得るための勉強をするために福井県立盲学校へ入学する。日語で時々英語混じり

    わが盲想 - Life and Pages
    ishiduca
    ishiduca 2021/12/12
    著者はスーダン人のモハメド・オマル・アブディンさん。12歳のときに視力を失う。それでもスーダンの大学に通っていたのだが、19歳の時、日本から鍼灸の資格を身につけたい外国人の留学生を募集していることを知る...
  • 傘のさし方がわからない - Life and Pages

    このタイトルはどういう意味なのだろうと思ってページを開くと、その話から始まった。雨の中、傘を差し掛けながらお母さんの車椅子を押す作者。途中、ケータイの所在を確認しようと、ちょっともっててと母に傘を渡す。無事に確認できて、傘を受け取ろうとすると母はそこにいない。手にした傘が強風に煽られて、離れていく! なんとか無事に母と傘に追いつき、なんでそんなに傘のさし方が下手なのか、と母に言うと、母から返ってきた言葉が、こののタイトルだった。母曰く、車椅子に乗るようになってから、片手で何かを持ちながら進むということができなくなった、と。こえした、言われて見毛羽、なるほどとか、へーとなる発見がこのには多い。日々の暮らしを見つめる眼の解像度が高い、というか、センサーが敏感なのだ。作家というのはすごいものだ。 このは、昨年、岸田さんが書いたの続編。日記と合わせると三冊目のだ。前作では文章で笑わせる才

    傘のさし方がわからない - Life and Pages
    ishiduca
    ishiduca 2021/10/19
    日常の中の違和感、小さいけれど、実はとても大きなバリアだったり、不条理だったりを発見する...「差別は姿かたちをジワジワ変えて、いまもわたしのすぐそばにいる...わたしは『思いこみ』と読んでいる。」#岸田奈美
  • クララとお日さま - Life and Pages

    クララは人工親友という存在だ。ジョジーに選ばれて、彼女と一緒に暮らすようになる。AIを備えた彼女は自分でどんどん学習し、自分なりの考えや信念を持つ。20世紀の文学で描かれた信念を持って行動した黒人たちや、異端と言われながら信仰を捨てなかった宗教者のように。 カズオ・イシグロの文学の舞台は、どこかの国の未来の話のようでいて、今われわれが生きている時代と地続きだ。クララの気持ちによりそい、彼女が信じて守ろうとしたものを共感することができる。他の子供たちは純粋で、のびのびと描かれる。大人たちは愚かだが、すべては子供のためを思って生きている。 自身の信じるところを貫いたクララの一生は幸せだったのだろうか。いや、幸せとは何なのだろうか。登場人物のそれぞれが思い描いたあるべき姿の、どれが正解だったのだろうか。そう思うと信念を貫いたクララの生き方から、私たちは学ぶことがたくさんある。しばらくは読後感の余

    クララとお日さま - Life and Pages
  • 日々翻訳ざんげ - Life and Pages

    師匠の翻訳生活40周年の振り返りだ。高校の英語教師時代から翻訳を始め、その後翻訳家として一立ちして、現在までに訳書は200冊以上を超える。ミステリー、ハードボイルドファンならたぶん田口俊樹訳のを一冊は読んだことがあるのではないだろうか。 その大家が翻訳生活40周年を振り返り、過去の自分の訳書を読み直して誤訳や試行錯誤について赤裸々に語っている。翻訳書の誤訳を指摘するは世の中にたくさんあって、「こんな間違いをするなんて信じられない」という非難めいたものを感じることもあるのだが、このはそもそも自分の訳したを取り上げて自分で突っ込みをいれている。過去の間違いに対する懺悔と若き日の自分に対する忸怩たる想いが吐露され、そして少々の言い訳を聞かされることになる。軽妙洒脱な文章ゆえに、過去の間違いをユーモラスにくさす、というベテラン漫談家のような語り口に読んでいても口元が緩む。 今でも質問に

    日々翻訳ざんげ - Life and Pages
    ishiduca
    ishiduca 2021/03/09
    翻訳生活40周年を振り返り、過去の自分の訳書を読み直して誤訳や試行錯誤について赤裸々に語っている。
  • 映画 日々是好日 - Life and Pages

    ずっと観たかった映画をようやく録画で観た。コロナの、こんな時期に観てよかったと思う。お話はごく普通の、したいことが何かわからない女子大生が、ふとしたことで茶道教室に通うことになるところから始まる。あ、その前に小学生の頃に両親に連れられてフェリーニの「道」を観にいき全然わからなかったよというのがオープニングだ。一緒に教室に通いはじめた仲のよいいとことともにゼロから茶の湯を学んでいく。そのいとこが商社に就職し、自分は就職できずフリーライターになり、そのいとこが結婚して遠くへ行ってしまい、自分は結婚の約束を交わした彼氏に裏切られたりと、いろんなことが彼女の身に降りかかる。とは言っても、それは普通に暮らしていても出会う出来事だ。 淡々と過ぎていく時間の中で、彼女はずっとお茶の教室に通う。最初はなんとなく行っていただけだったのに、すっかり生活の中の習慣になっていたから。あるときから彼女は一人暮らしを

    映画 日々是好日 - Life and Pages
    ishiduca
    ishiduca 2020/06/21
  • 月の沙漠をさばさばと - Life and Pages

    さきちゃんとお母さんの12の短いおはなしの連作集。小学三年生のさきちゃんのお母さんはお話を作る仕事をしていて、さきちゃんは寝るまえにふとんに入ってからお母さんに話をしてほしいとせがむ。お母さんは「この話に出てくるのは誰だと思う?」と問いかけ、さきちゃんが「くまさん」と言うと「よく分かったね。じゃあどんなくまさんだと思う?」と娘の要望を聞きながら話を作っていく。 お母さんは、さきちゃんの目線で想像するのがとっても上手で、聞き間違えたりすると、それはきっと昨日聞いたお話のせいだなとわかってあげて、全力でさきちゃんの想像力を受け止める。この母と娘はそうやってしっかりと日々を暮らしている。 世のお母さん方は、こういうことをずっとしているんだろうなと、思ってしまう。この小説が日常のやりとりを上手にくみ取ってくれているからだ。 挿画がかわいい。表紙から頁の中までこの小説の世界観がずっと広がっている。

    月の沙漠をさばさばと - Life and Pages
    ishiduca
    ishiduca 2020/05/29
    #北村薫
  • ただの眠りを - Life and Pages

    1984年、メキシコ。72歳になったフィリップ・マーロウは家政婦と拾ってきた野良犬と一緒に住んでいた。探偵の看板を外したわけではないが、引退に等しい暮らしだった。そんなマーロウに、生命保険会社から仕事の依頼が来る。事故死した男の保険金を払い込む前に、事実関係を洗って欲しいという依頼だった。 マーロウは(もちろん)仕事を引き受ける。そして、以前のように、自ら危ない橋を渡り、待ち受ける危険の渦中へ杖をつきながら乗り込んでいく。その杖は、座頭市の映画にインスピレーションを得たという仕込み杖。日で刀鍛冶に作ってもらったという。 フィリップ・マーロウのストーリーを、チャンドラー亡き後に何人かの作家が書いたが、どれもいまひとつだと感じていた。だが、この小説の中には、たしかにマーロウがいた。犯罪のにおいを嗅ぎつけ、気になる女の後を追う。理性よりも好奇心にまかせて進む無鉄砲な行動。少なめになったとは言え

    ishiduca
    ishiduca 2020/02/01
    #マーロウ
  • 11月に去りし者 - Life and Pages

    おもしろい小説だった。舞台は1963年11月22日から始まる。そう、ケネディが暗殺されたことから物語は動き出す。マフィアの幹部ギドリーは、ケネディ暗殺のニュースを聞いて、ぴんと来るものがあった。その一週間前、ダラスの町で自動車を一台手配する仕事をしていたからだ。その車は暗殺事件に関与したに違いない。そして、その車を処分する依頼が来た。やはり。ボスは、すべての証拠とすべての関係者を消すつもりだ。俺も消される。そして、逃避行が始まる。 彼を追う殺し屋バローネのストーリーが重なり、アル中の夫を捨てて娘二人を連れて車で西へと向かう主婦シャーロットのストーリーが重なる。ハードボイルドタッチだが、登場人物それぞれの心情が吐露されている。疑心暗鬼、一喜一憂。信じたいけれど、絶対的な確信は得られない。嘘だとわかっていても、そこには一片の真実がある。誰もがみな人間くさく描かれている。 ケネディ暗殺にまつわる

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    ishiduca
    ishiduca 2019/11/06
  • イタリアン・シューズ - Life and Pages

    フレドリック・ヴェリーンはかって医師だったが、人が言うところの大惨事(カタストロフ)のせいで仕事を辞めて、子どものころ家族と暮らしていたスウェーデンの小さな島で一人暮らしをしている。犬とがいるだけで、その島には他に誰も住んでいない。郵便配達人が舟に乗って定期的にやって来るが、挨拶を交わすだけで一度も家に招いたことはないし、来客はまったくない。それなのに、冬のある日、家の前の凍った海の上に一人の女性が倒れていた。フレドリックは救出に向かう。それはかつての恋人で、彼が37年前に黙って彼女の元を立ち去って以来の再会だった。 かつての恋人ハリエットは「人生で一番美しい約束を果たして」と迫る。彼女は余命幾ばくもない病気に冒されていた。その約束とは、彼が幼い頃に父親と出かけた湖を彼女に見せること。当は何が望みなのだろうかと訝りつつ、フレドリックは彼女をつれてその湖に向かう。すべてを拒絶して、世捨

    イタリアン・シューズ - Life and Pages
    ishiduca
    ishiduca 2019/07/13
    "過去を振り返るとき、30歳は30年分を、そのときの自分にとっての意味合いとして解釈する。60歳なら60年分を、そのときの視点から解釈する。過去に起こった出来事は変わらないのに、解釈が変わる"
  • Xと云う患者 - Life and Pages

    芥川龍之介を愛する、イギリス人作家が、芥川人の身に起こったことと、作品の中の主人公との話をひとつの巻物のように繋げて書き上げた、不思議な話だ。芥川の作品が解体され、解題され、この小説の中で展開される。芥川龍之介人の身に起こったことなのか、芥川の小説の中の話なのか、判断がつかないものもある。調べてみれば、その違いは明解になるだろうが、そのことはこの小説を楽しむこととは関係ないように思う。この小説が目指すものは、小説を含めた芥川龍之介の、不思議な世界観を堪能することなのだと思う。 を読みながら感じたのは、映画チィゴィネルワイゼンを観た後と似ているということだ。私は、あの映画を観てからしばらくの間、現実の世界と、あの映画の中で描かれていた世界がどこかでつながっているように感じた。学校の長い廊下を歩いていると、突き当たりを曲がった先はあの映画の舞台にふっと入ってしまうのではないかとか思うこと

    Xと云う患者 - Life and Pages
    ishiduca
    ishiduca 2019/06/21
    "芥川龍之介を愛する、イギリス人作家が、芥川本人の身に起こったことと、作品の中の主人公との話をひとつの巻物のように繋げて書き上げた、不思議な話だ"
  • NHKスペシャル 彼女は安楽死を選んだ - Life and Pages

    一人の女性がスイスに渡り、安楽死という方法で最期を迎えた。おだやかに、そっと。 彼女は原因不明の全身の筋肉に力が入らなくなる難病になり、少しずつ自分の体が自分でコントロール出来なくなっていく。ある日、入院していた病院の医師に勧められ、同じ病気を持ち、さらに進行した人たちが入院する病院を見学に行くことになる。いつかは、自分が入院するかもしれない場所だ。彼女は呼吸器につながれ、自分の意志では何も出来ない人を見て、考え込む。生きるとは、人の尊厳とは、何なのか。それから何度か自殺を試みるが、衰えた筋力では自殺すらままならなくなっていた。 二人の姉が見舞いに来てくれるのだが、彼女は全面的に頼ることができない。それは性分なのだ。そして、彼女は安楽死について学びはじめる。日では認可されていないが、スイスでは、条件が整った人たちに安楽死を選択させてくれる施設があった。人の尊厳を守るための1つの選択肢とし

    NHKスペシャル 彼女は安楽死を選んだ - Life and Pages
    ishiduca
    ishiduca 2019/06/07
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