挨拶してますか。私は20代に入るくらいまで、ぜんぜんできない人間でした。挨拶の真意がよく分からなかったんですよ。もちろんそれまでに学校で、「おたがい、挨拶をすると気持ちがいいぞ」なんて教えられていたわけですが、「そんな言うほど気持ちよくなるかぁ?」と、疑心暗鬼だったわけです。 人が他人を確認する方法に、挨拶を挟む必要は本当ならありません。お互いの視線で、ああ、人がいるなと確認できればいい。その人が自分と関わりのない人なら尚更です。知り合いなら、まあ、せいぜい会釈をしたり、「よぉ」なんて手をあげれば済むわけです。 が、そういうわけにいかないのが人間社会であるというのを意識するのが、私は大分遅かったんだなぁと思わざるを得ません。人間社会はありとあらゆる儀礼によって成り立っている。儀礼と共にこの世に生を受け、儀礼と共にこの世を去る。人よっては、その存在自体が儀礼そのものだったりもする。そういう場