メタリックなノートパソコンを開き、よどみなくキーボードを叩いて英字を打ち込む。携帯電話が鳴り響くと、耳元に当てる。 「原稿、いま送りました。長いの、2本だけ待ってください」 '04年秋、ドラフト史上最年少の15歳で指名されて阪神に入団した辻本賢人はいま、雑誌の原稿を翻訳する仕事に取り組んでいる。出版社から依頼が来れば、丁寧に英訳していく。 '17年1月、プロ野球界は合同自主トレで体を動かす新人選手が話題の中心だ。お手並み拝見の春季キャンプが目前に迫り、希望と不安がないまぜになる季節だろう。あのとき、マスメディアに「ワンダーボーイ」と騒がれた15歳は、いま、28歳の青年になった。遠くを見ながら首をかしげる。 「いまは、もう全然、野球が気にならない。ホンマに、あの世界にいたのかなって思うくらい。違う人生を生きていたような感じがします。野球をやっていたときと野球が終わってから、人間が違うみたいな
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