’09年からワクチンを投与した患者のがん細胞が次第に縮小し、’11年5月には消滅した(千葉徳洲会病院・浅原新吾氏提供) 「私はもう日本には戻りません」 こう断言するのは、米国シカゴ大学の中村祐輔教授(60歳)。’12年4月に研究拠点を東京大学医科学研究所からシカゴに移した。 中村氏が開発した「がんペプチドワクチン」は、これまでの抗がん剤のように副作用を起こさない新しいがん薬として世界中から注目を浴びている。日本国内の臨床研究では非常に悪化した肺がん患者や、難治といわれるすい臓がんの患者も回復させるなどの成果をあげている。シカゴに拠点を移したため、日本国内でがんワクチンの臨床研究に支障が起こりつつある。しかし、なぜ中村氏は遠くシカゴに行ってしまったのだろうか? 昨年末に上梓した著書『がんワクチン治療革命』(講談社)に、その理由が書かれている。理由の30%は「シカゴ大学に(自分の研究の)チャン