中条省平「傷痍軍人から、戦争を忘れ去る日本人へ 水木しげる『総員玉砕せよ!』ほか」『星星峡』(幻冬舎)153、pp.100-105 水木しげるの『総員玉砕せよ!』などの作品を論じたものだが、そこから「傷痍軍人」に言及している部分を抜書き; 幼児のころ、親に連れられて東京の下町(たぶん)を歩き、どこかのトンネルをくぐったとき、当時としてもすでに時代遅れとなった軍帽をかぶり、白い着物をきて、盲目だったり、手足がなかったりする人々が4、5人、トンネルの暗がりに群をなして、悲しい、というより、陰惨な節回しの歌を歌っていました。手のあるものはアコーディオンを弾き、黒眼鏡をかけている者もいました。その異形を見て私は震えあがりました。 あとで親に「あれはなに?」と聞くと、「ショーイグンジン」という答えが返ってきましたが、見て見ないふりをするような親の態度に、これは聞いてはいけないことを聞いてしまったと子