「キーボード配列QWERTYの謎」という本を読んだ。タイプライターのキー配列がQWERTY配列になっていく過程と、QWERTY配列をめぐる嘘がなぜ広まったかを描いている。 私はこの本を、現在に重ね合わせながら読んだ。本書はQWERTY配列の誕生をめぐるデマを否定するために、タイプライターが発明され普及していくまでを詳細に論じているのだが、この部分が、19世紀末のメディア産業をめぐるテクノロジー競争の紹介にもなっている。 例えば、タイプライターの発明者でありながら主導権をとれず、それでも一生をタイプライターの改良に捧げたクリストファー・レイサム・ショールズは1840年、18歳の時にウィスコンシン準州グリーン・ベイのウィスコンシン・デモクラット紙の編集者として出発し、後に自ら創刊したサウスポート・テレグラフ紙の編集長となった新聞人だ。ショールズがタイプライターの開発を始めたのは、新聞製作の効率