香川県で暮らす弁護士の佐藤倫子さん(41)の弟、理一(まさかず)さん(39)は最重度の重複障害者だ。脳性まひとダウン症で、最近は耳も聞こえない。佐藤さんは相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」の惨劇の報に触れ、「弟は、事件で標的にされた方々と全く同じ境遇にある」と思った。 事件の3日後、母キクさん(67)に電話してみた。「被害者の方たちは、息子にしか思えない」。キクさんはインターネットで事件のことを検索する度に、障害者をおとしめる植松聖(さとし)容疑者(26)の考えや、同調する人たちの心ない言葉に傷ついていた。「息子を施設に入れた自分を責めてしまう」と、電話口で泣いた。事件のことばかりを考えてしまうので、裁縫に没頭するようにしていると、母は言った。 電話を切った後、佐藤さんも涙があふれ出てきた。弟が何者かに刺される様子が目に浮かび、悲しくて悲しくて、どうしたらいいのか分からなくなった。