万年筆が彩りを持った日。 自分の人生史上、万年筆が記号的存在から変わったのって勤め始めてからです。 入学祝いで親戚から贈られたし、サークルの送別会でもいただいたんですが、使い勝手でいえばボールペンが良いし、一度インクを入れると使い切らないといけないイメージから学生時代は使うことがなかった。インクも挿さずにしまってました。 文具系の雑誌で特集されるくらい「嵌る人の多い筆記具」という知識はありつつも、文具の中でも万年筆って価格の桁が違うので、何かきっかけでもないと手を出せない、高嶺の花的存在だったんです。選び方もわからないですしね。 そんなある頃、偉い人のかばん持ちで海外の企業との契約合意に立会う機会に恵まれまして。詰めの調整も終わり書面が整ったところで、先方と上司が万年筆をそれぞれ取り出して、署名を始めたのです。 結構シビアな契約で空気自体が張ってたのもあるんですが、万年筆の書く音がとても印