一九四二年六月七日 トラック諸島 日本海軍の太平洋における最大拠点であるトラック諸島。豪州に睨みを利かせることのでき、かつ泊地とするに適した地理的条件も兼ね備えたここは、大型機の発着も可能な広大な飛行場や多数の要塞砲が設置されるなど、日本海軍の一大拠点として存在していた。 特に、日英間の緊張が高まる中、パラオやマーシャル諸島と共にトラック諸島の重要性はより一層高まっていた。こちらが保持していれば豪州方面への抑えとして機能するが、逆に英側に奪取された場合、マリアナ諸島やフィリピンへの侵攻の足がかりとなってしまう。そのため、一九四一年九月より海軍基地航空隊の精鋭や南方防衛を担う第二艦隊が常駐するようになっていた。 とはいえ、未だ英側が軍事的行動を起こさないため、臨戦態勢とは程遠い状況だった。この日も、何事も無く過ぎていく──筈だった。 「……あれ?」 この日、冬島に設置されている陸上用電探の