ロシア軍の侵攻から5週間が過ぎるなか、多くのウクライナ人たちが、ロシアに住む親族に悲惨な戦争の現実を伝えようとしている。だが、ロシアは国内で情報を厳しく統制し、独自の筋書きを広めている。それぞれの「真実」が、家族の仲を引き裂いている。 ロシア軍による侵攻が始まった2月24日。ウクライナ西部リビウに住むドキュメンタリー作家のスニジャーナ・ホサラビッチさん(34)は午前9時ごろ、ロシア東部の街に暮らす伯母(62)に、急いでインターネット電話を掛けた。自分の祖母(83)、伯母にとっての母親がいるウクライナ南部の街の近くに、ロシア軍による攻撃があったことを知らせるためだ。 だが、伯母が口にしたのは意外な言葉だった。 「ロシアがネオナチからウクライナを救いに行った。ロシア語を話すウクライナ人も助けるのよ」 「ママ」と呼ぶほど仲の良かった伯母が、ウクライナで育った兄がーー。ロシアとウクライナでまったく