これは恐ろしい話である。アメリカが世界に広めようとしている民主主義とは、かくなるものかと考えさせられてしまう。 少し前テレビを見ていたら、戦争とプロパガンダの問題を取り上げていた。ヴェトナム戦争の頃は、従軍記者は比較的自由に取材して、自由に報道していた。戦争の生々しい光景がお茶の間に飛び込み、国内の厭戦気分を誘い、ヴェトナム戦争も終結を見た。 湾岸戦争のときは、まるでテレビゲームを見ているようで、むごたらしい兵士や住民の死傷の有様は殆ど報道されなかった。湾岸戦争の頃になると、メディアはプロパガンダの武器として、世論を操作するようになった。テレビを見ていたら、イラクの兵士に赤ん坊を投げ捨てられたと、涙ながらに訴えているクエートの若い母親の映像が出てきた。然しこれは完全なプロパガンダ用のやらせで、母親を演じていたのは何とクエートの大使の娘であったことが後で分かったという。 著者ノーム・チョムス