情報には相応の価値があり決してタダではない−現代人にはすぐ合点がいく話だ。物理学がこの“常識”に達するには長い時間がかかった。百五十年にわたる議論の末、中央大と東京大の研究グループが情報をエネルギーに「変換」する装置をつくり出した。情報を燃料代わりに車を走らすこともできる可能性があるという。「マックスウェルの悪魔」とも呼ばれるこの装置はどのように働くのだろうか。 (永井理) 一八七〇年代。イギリスの大物理学者マックスウェルは「マックスウェルの悪魔」と呼ばれる仮想的な生き物を提案した。特徴は分子一つ一つの種類やスピードを見分けられること。これが物理学に大問題を投げかけた。