昨年デビュー10周年を迎えた安藤裕子。出世作である“のうぜんかつら(リプライズ)”がピアノの伴奏のみによる柔らかな曲調だったこともあって、今も彼女に「癒し」のイメージを持っている人も少なくはないだろう。もちろん、そういった側面も彼女の魅力であることは間違いないのだが、ステージ上での彼女は体全体でバンドとぶつかり合い、必死の形相で声を絞り出す、相当にエネルギッシュなシンガーでもある。また、「牙の行方」と題して、2010年にホームページ上の日記で書かれた文章では、CDが売れなくなった音楽業界の現状を生々しく綴り、大きな反響を呼んだこともあった。やはり、白く塗られたイメージの背後に滲む原色の強烈さこそが、安藤裕子という人の最大の魅力であるように思う。 2008年からスタートしたアコースティックツアーでのアレンジをベースとして、1stアルバム『Middle Tempo Magic』からの再録曲を中