1 本提言の目的と背景――さらなる刑法改正に向けて 2017年、110年ぶりに刑法の性犯罪規定が改正された。その際、「必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする」という附帯決議(附則9条)が付け加えられた。この決議に基づいて、法施行後3年にあたる2020年に法務省に「性犯罪に関する刑事法検討会」が設置され、審議が始まった。この機に、本提言を通じて、刑法のさらなる改正を求めたい。 たしかに、2017年の刑法改正は、性犯罪の加害者・被害者の性中立化(加害者・被害者の性別を問わない)や非親告罪化(被害者の告訴がなくとも検察官が職権で起訴できる)などいくつかの点で大きな改善を果たした。しかし、「個人の尊重」という日本国憲法の理念を十分に反映した改正にはなっていない。また、憲法13条で保障されている「自己決定権」を尊重する形での改正は、いまなお実現していない。一方、国際