『全滅なう』特別短編 下斗米さんと矢木沢さん ※「ある日の遠矢くん1」未読の方は、よろしければそちらもあわせてお楽しみください。 ――あぁーマジ眠れない。 下斗米恵は寝つけない夜をすごしていた。 「むー」とうなってみる。 寝返りを打ってみた。 だめだ。 まるで眠れそうな気がしない。 恵はふとんを鼻の下まで引っぱりあげて、しばらくじっとしていよう、と心に決める。 息を殺していたら、規則正しい寝息が聞こえてきた。 文字で表せば「すふゅー、すふゅー」というかんじだ。 「……っ、か、かわいい……っ」 感動のあまり、思わず呟いてしまった。 電気を消して、カーテンを閉めているから、今、恵の部屋は真っ暗だ。もう十二時をすぎていて、恵はいつも十一時には寝ることにしているのであたりまえだろう。でも、いつもとは違い、部屋には恵だけじゃなくて、もう一人いる。恵は自分のベッドで寝ているのだが、