なぜそんな話題になったのかは覚えていない。相手は知人の、イタリア人の精神科医だった。ローマ市街のはずれからホテルまで、彼の車で送ってもらいながら、何となく毎朝何時に起きる習慣か、きいてみたのだ。彼は6時には起きている、と答えた。勤務先の病院には8時前にはついているという(欧州は比較的早起き社会だ)。じゃ、寝るのは? ときいたら、彼はふりむいて、「12時頃なんだ。」と残念そうにいう。「10時には寝たいといつも思う。でも、それは不可能だし。」 私はシエスタ(昼寝)のことはあえてたずねなかった。自分でシャッターをおろせる開業医ならともかく、勤務医はとれないに決まっている。そうでなければ彼がうらめしそうに10時に寝たいというわけがない。中堅の勤務医は、洋の東西を問わずどこの国でも、公私ともにめっぽう忙しいのだ。私は、自分も平日は6時間程度しか眠る時間がとれない、と説明した。それが体に良いとはとても