西郷隆盛と愛犬ツン 盛夏の熱中に焼かれて、西郷さんの巨像がさらに一段とふくらんで見えた。 西郷像は上野台地、上野公園の最南端に位置していて、南東の方角を向いてたたずんでいる。目の先には、東京湾が広がっていたが、今ではすっかりビルに取り囲まれていて、視界は遮られている。 像が作られ除幕式が行われたのは、明治31年(1898)、西郷が鹿児島の城山で亡くなって21年が経過していた。西郷像の背後地は、彰義隊が最後まで立てこもり官軍に抵抗した場所である。彰義隊がこの場所を最後の決戦地したことには理由があった。 上野台地は、江戸城の方角から見て北東、丁度鬼門の位置に当たっている。城を鎮護するために建てられたのが寛永寺で、京都王城を守護する延暦寺に見立てられた。台地下に残る不忍池は、琵琶湖に見立てられ弁財天が祀られたが、古東京湾の湿地帯が封印されて残された池である。 西郷像が上野台地に置かれた