前回は、昔のケータイ小説と今のケータイ小説を見比べて、変化した部分と変化していない部分、両方について考えてみた。その結果、全体のテイストは「切ない」から「激甘」へと変化を遂げたものの、かつてのケータイ小説ヒット作によく見られた展開――小説家・評論家の本田透が「七つの大罪」と呼んだようなセンセーショナルな要素は、現在のケータイ小説にも頻出であることがわかった(※1)。 ・ケータイ小説「七つの大罪」はどこへ消えたのか しかしどうしてだろう? 夢物語を志向するのであれば、不穏な要素はすべて排除してしまってもいいではないか。実際、コバルト文庫などの少女小説レーベル(全年齢向け)の作品には、レイプだ売春だといった展開はまず出てこない。しかし、ケータイ小説からそれは失われる気配がないのだ。もちろん、全ての作品に出てくるわけではないのだが、ただ少なくとも、ジャンル全体が「それは『あるある』だ」という雰囲