1. 三河 美香梨(みかわ みかり)が騙されたと気が付いたのは、22歳のときでした。いつから騙されていたかと言うと、14歳のときからです。 美香梨は福岡県 北九州市の山奥の村で生まれました。実家は一粒何千円のレベルのイチゴを育てる農家です。森と川だけが遊び場で、小さい頃は森を駆けずり回って虫を捕まえて、汗だくになった体で川に飛び込んでサッパリご機嫌になって帰宅したものです。けれども14歳になってスマートフォンを手に入れると、地元のすべてが東京に生きる若者たちには見劣りするようになりました。インスタに毎日のように上がる誰かの自撮りは、異世界のお姫様のように見えました。何万人というファンを抱えるインフルエンサーたちの大ゲンカは、神々の戦いです。泥沼のゴシップすら、キラキラと見えました。ハロウィンの日には渋谷のスクランブル交差点を定点カメラで眺めて、ここに加わりたいと強く祈ったものです。 やがて
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