タグ

青空文庫に関するCrowserのブックマーク (11)

  • http://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/1573.html

  • 太宰治 女生徒

    あさ、眼をさますときの気持は、面白い。かくれんぼのとき、押入れの真っ暗い中に、じっと、しゃがんで隠れていて、突然、でこちゃんに、がらっと襖(ふすま)をあけられ、日の光がどっと来て、でこちゃんに、「見つけた!」と大声で言われて、まぶしさ、それから、へんな間の悪さ、それから、胸がどきどきして、着物のまえを合せたりして、ちょっと、てれくさく、押入れから出て来て、急にむかむか腹立たしく、あの感じ、いや、ちがう、あの感じでもない、なんだか、もっとやりきれない。箱をあけると、その中に、また小さい箱があって、その小さい箱をあけると、またその中に、もっと小さい箱があって、そいつをあけると、また、また、小さい箱があって、その小さい箱をあけると、また箱があって、そうして、七つも、八つも、あけていって、とうとうおしまいに、さいころくらいの小さい箱が出て来て、そいつをそっとあけてみて、何もない、からっぽ、あの感じ

  • 中島敦 山月記

    隴西(ろうさい)の李徴(りちょう)は博学才穎(さいえい)、天宝の末年、若くして名を虎榜(こぼう)に連ね、ついで江南尉(こうなんい)に補せられたが、性、狷介(けんかい)、自(みずか)ら恃(たの)むところ頗(すこぶ)る厚く、賤吏(せんり)に甘んずるを潔(いさぎよ)しとしなかった。いくばくもなく官を退いた後は、故山(こざん)、略(かくりゃく)に帰臥(きが)し、人と交(まじわり)を絶って、ひたすら詩作に耽(ふけ)った。下吏となって長く膝(ひざ)を俗悪な大官の前に屈するよりは、詩家としての名を死後百年に遺(のこ)そうとしたのである。しかし、文名は容易に揚らず、生活は日を逐(お)うて苦しくなる。李徴は漸(ようや)く焦躁(しょうそう)に駆られて来た。この頃(ころ)からその容貌(ようぼう)も峭刻(しょうこく)となり、肉落ち骨秀(ひい)で、眼光のみ徒(いたず)らに炯々(けいけい)として、曾(かつ)て進士に登

  • 中島敦 文字禍

    文字の霊(れい)などというものが、一体、あるものか、どうか。 アッシリヤ人は無数の精霊を知っている。夜、闇(やみ)の中を跳梁(ちょうりょう)するリル、その雌(めす)のリリツ、疫病(えきびょう)をふり撒(ま)くナムタル、死者の霊エティンム、誘拐者(ゆうかいしゃ)ラバス等(など)、数知れぬ悪霊(あくりょう)共がアッシリヤの空に充(み)ち満ちている。しかし、文字の精霊については、まだ誰(だれ)も聞いたことがない。 その頃(ころ)――というのは、アシュル・バニ・アパル大王の治世第二十年目の頃だが――ニネヴェの宮廷(きゅうてい)に妙(みょう)な噂(うわさ)があった。毎夜、図書館の闇の中で、ひそひそと怪(あや)しい話し声がするという。王兄シャマシュ・シュム・ウキンの謀叛(むほん)がバビロンの落城でようやく鎮(しず)まったばかりのこととて、何かまた、不逞(ふてい)の徒の陰謀(いんぼう)ではないかと探って

    Crowser
    Crowser 2011/09/29
    短い中に色んな寓話性が詰まったお話。 図書カード:http://www.aozora.gr.jp/cards/000119/card622.html
  • 太宰治 駈込み訴え

    申し上げます。申し上げます。旦那さま。あの人は、酷(ひど)い。酷い。はい。厭(いや)な奴です。悪い人です。ああ。我慢ならない。生かして置けねえ。 はい、はい。落ちついて申し上げます。あの人を、生かして置いてはなりません。世の中の仇(かたき)です。はい、何もかも、すっかり、全部、申し上げます。私は、あの人の居所(いどころ)を知っています。すぐに御案内申します。ずたずたに切りさいなんで、殺して下さい。あの人は、私の師です。主です。けれども私と同じ年です。三十四であります。私は、あの人よりたった二月(ふたつき)おそく生れただけなのです。たいした違いが無い筈だ。人と人との間に、そんなにひどい差別は無い筈だ。それなのに私はきょう迄(まで)あの人に、どれほど意地悪くこき使われて来たことか。どんなに嘲弄(ちょうろう)されて来たことか。ああ、もう、いやだ。堪えられるところ迄は、堪えて来たのだ。怒る時に怒ら

  • あのときの王子くん LE PETIT PRINCE アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ  Antoine de Saint-Exupery 大久保ゆう訳

    ぼくが6つのとき、よんだにすばらしい絵があった。『ぜんぶほんとのはなし』という名まえの、しぜんのままの森について書かれたで、そこに、ボアという大きなヘビがケモノをまるのみしようとするところがえがかれていたんだ。だいたいこういう絵だった。 「ボアというヘビは、えものをかまずにまるのみします。そのあとはじっとおやすみして、6か月かけて、おなかのなかでとかします。」とには書かれていた。 そこでぼくは、ジャングルではこんなこともおこるんじゃないか、とわくわくして、いろいろかんがえてみた。それから色えんぴつで、じぶんなりの絵をはじめてかいてやった。さくひんばんごう1。それはこんなかんじ。 ぼくはこのけっさくをおとなのひとに見せて、こわいでしょ、ときいてまわった。 でもみんな、「どうして、ぼうしがこわいの?」っていうんだ。 この絵は、ぼうしなんかじゃなかった。ボアがゾウをおなかのなかでとかしてい

    Crowser
    Crowser 2011/09/29
    青空文庫形式にて公開。「あとがき」が優れた翻訳論として読み応えあり。 図書カード:http://www.aozora.gr.jp/cards/001265/card46817.html
  • 坂口安吾 不良少年とキリスト

    もう十日、歯がいたい。右頬に氷をのせ、ズルフォン剤をのんで、ねている。ねていたくないのだが、氷をのせると、ねる以外に仕方がない。ねてを読む。太宰のをあらかた読みかえした。 ズルフォン剤を三箱カラにしたが、痛みがとまらない。是非なく、医者へ行った。一向にハカバカしく行かない。 「ハア、たいへん、よろしい。私の申上げることも、ズルフォン剤をのんで、氷嚢をあてる、それだけです。それが何より、よろしい」 こっちは、それだけでは、よろしくないのである。 「今に、治るだろうと思います」 この若い医者は、完璧な言葉を用いる。今に、治るだろうと思います、か。医学は主観的認識の問題であるか、薬物の客観的効果の問題であるか。ともかく、こっちは、歯が痛いのだよ。 原子バクダンで百万人一瞬にたゝきつぶしたって、たった一人の歯の痛みがとまらなきゃ、なにが文明だい。バカヤロー。 女房がズルフォン剤のガラスビンを縦

    Crowser
    Crowser 2011/09/29
    [?B]太宰の死に寄せて、愛情と哀しみに溢れた文章。 図書カード:http://www.aozora.gr.jp/cards/001095/card42840.html
  • 太宰治 新ハムレット

    はしがき こんなものが出来ました、というより他(ほか)に仕様が無い。ただ、読者にお断りして置きたいのは、この作品が、沙翁(さおう)の「ハムレット」の註釈書でもなし、または、新解釈の書でも決してないという事である。これは、やはり作者の勝手な、創造の遊戯に過ぎないのである。人物の名前と、だいたいの環境だけを、沙翁の「ハムレット」から拝借して、一つの不幸な家庭を書いた。それ以上の、学問的、または政治的な意味は、みじんも無い。狭い、心理の実験である。 過去の或(あ)る時代に於(お)ける、一群の青年の、典型を書いた、とは言えるかも知れない。その、始末に困る青年をめぐって、一家庭の、(厳密に言えば、二家庭の、)たった三日間の出来事を書いたのである。いちどお読みになっただけでは、見落し易(やす)い心理の経緯もあるように、思われるのだが、そんな、二度も三度も読むひまなんか無いよ、と言われると、それっきりで

  • R.U.R.(Rossum's Universal Robots) - Karel Capek 大久保ゆう訳

    RUR ――ロッサム世界ロボット製作所 R.U.R.(Rossum's Universal Robots) カレル・チャペック Karel Capek 大久保ゆう訳 【登場人物】 ハリィ・ドミン…………RUR代表取締役 スラ………………………ロボット(♀) マリウス…………………ロボット(♂) ヘレナ・グローリィ……RUR会長の娘 ガル博士…………………RUR生理研究局主任 ファブリ技師……………RUR技術担当主任 ハレマイヤ博士…………ロボット心理教育研究所所長 アルクイスト建築士……RUR労働局主任 ブスマン部長……………RUR営業部部長 ナナ………………………ヘレナの乳母 ラディウス………………ロボット(♂) ヘレナ……………………ロボット(♀) プリムス…………………ロボット(♂) ロボットA ロボットB ロボットC 執事ロボット その他適宜たくさんのロボット 第一幕 RURロボッ

  • フランツ・カフカ Franz Kafka 大久保ゆう訳 処刑の話 In der Strafkolonie

    「こいつがまた、いい機械なんです。」 旅人にそう言って、将校は、もう知りつくしたはずの機械を、あらためてほれぼれと眺めた。 ただの義理だった。 旅人は司令官に頼まれて、しぶしぶ来ていた。一人の兵士が、不服従と上官侮辱で処刑されるから、立ち会ってほしい、と。 この流刑地でも、この処刑に対する関心は低いようだった。 荒れ果てた深い谷の底に、小さな場所があった。周りの斜面には草が一も生えていなくて、谷底に将校と旅人と囚人。 囚人はぼんやりとしていた。大きな口に、汚れるにまかせた顔と髪。 隣にはもう一人兵士がいて、重そうな鎖を握っていた。囚人の首、手首、足首には小さな鎖がくくりつけられてあって、それぞれをつなげる鎖がまた別にあり、最後に兵士の持つ重い鎖にまとめられていた。 しかし、囚人は犬のようにおとなしくしていたので、鎖を外して、この谷間の斜面で勝手に走り回らせても、処刑執行の際に口笛さえ吹け

  • 作家別作品リスト:太宰 治

    津軽の大地主の六男として生まれる。共産主義運動から脱落して遺書のつもりで書いた第一創作集のタイトルは「晩年」(昭和11年)という。この時太宰は27歳だった。その後太平洋戦争に向う時期から戦争末期までの困難な間も、妥協を許さない創作活動を続けた数少ない作家の一人である。戦後「斜陽」(昭和22年)は大きな反響を呼び、若い読者をひきつけた。 「太宰治」 公開中の作品 ア、秋 (新字新仮名、作品ID:236) I can speak (新字新仮名、作品ID:1572) 愛と美について (新字新仮名、作品ID:1578) 青森 (新字新仮名、作品ID:46597) 青森 (新字旧仮名、作品ID:4357) 朝 (新字新仮名、作品ID:1562) あさましきもの (新字新仮名、作品ID:240) 新しい形の個人主義 (新字新仮名、作品ID:42360) 兄たち (新字新仮名、作品ID:239) 雨の玉

  • 1