一目惚れという言葉使うのは陳腐で気恥ずかしいけれども、その出会いを語る言葉を他に私は知らない。 運命の出会い、縁、どんな言葉を使っても陳腐になってしまう。けれどこの広い世界で出会い縁を結ぶということ、それが恋愛じみたものであればあるほど、三文恋愛小説のように陳腐な物語にしかならないのかもしれない。 陳腐でもいい。私はその日、思いがけずに出会ってしまったのだ。彼、と。 彼の姿を一目見た時、私の足は地面に吸い付いたかの如く動けなくなった。彼から目が離せない。けれども私は自分の中に芽生えた自らの意志が及ばざる感情を恐れて彼から逃げようとした。惹かれてはいけない、望んではいけない、そう唱えながら私は必死で目を逸らしてその場を立ち去ろうとした。 私は店内を一周して食料品などを物色していた。その間、さっき初めて出会ったばかりの彼の面影が脳裏に焼き付いて心はここにあらずだった。乳製品、惣菜、冷凍食品、肉