戦前の出版検閲の実態について、当時の検閲官が筆を入れた出版物の原本などで振り返る展示会が、東京都千代田区立千代田図書館(九段南一)で二十四日から開かれる。展示物からは、知られざる思想統制の実務の一端が浮かぶ。 (中山高志) 検閲制度下では、出版社が発行日の三日前までに、内務省に出版本を納本。検閲官は、問題箇所に傍線を引いたり、考えを書き込んだりする検閲原本として使い、発売を許可するかどうか判断した。 許可された検閲原本は、内務省から当時の東京市立駿河台図書館(現千代田図書館)など計四館の同市立図書館に保管を委託されることがあり、「内務省委託本」と呼ばれる。このうち、千代田図書館の委託本の存在が研究者の調査で近年確認され、三年前に同図書館が一般公開した。