私たちの文化的制度は,試練の時を迎えようとしている.人種的・社会的な公正をもとめる強力な抗議が起こり,長らく遅れていた警察改革を求める声が上がっているばかりか,さらに,高等教育・ジャーナリズム・慈善活動・芸術にとどまらず,私たちの社会全域にわたって,いっそうの平等と包摂が広く求められている.しかし,こうした清算は必要ではあるものの,同時に,この清算によって新たな種類の道徳的態度と政治的な姿勢が強化されている.この道徳的態度と政治的姿勢は,イデオロギー面での順応を優先して,公開の討議とお互いの相違への寛容という私たちの規範を弱める傾向がある.公正を求める前者の動きを私たちは歓迎する一方で,後者には抗議の声を上げる.反自由主義 (illiberalism) のさまざまな勢力は,世界中で力をつけており,ドナルド・トランプという強力な同盟者もいる.トランプは,民主主義に対する紛れもない脅威を代表す