殺人でもなければ過失事故でもない、真相は患者の自然死──。にもかかわらず、ひとりの女性看護助手が殺人罪に問われ、20代から12年もの間、獄中で過ごすことになった。本日、大津地裁で再審無罪判決が言い渡された西山美香さんが、本誌に語ったこととは(取材・文=粟野仁雄) ようやく認められた再審請求 2019年3月19日の昼頃、滋賀県彦根市のリサイクル工場で勤務中だった西山美香さん(39歳)にかかってきた、母・令子さん(68歳)からの電話は涙声だった。 「やっと出たで」 最高裁から届いた通知書には、「本件抗告を棄却する」と書かれていた。その日の夕方、大津市内で弁護団と喜びの会見をした西山さんは、「再審開始は弁護団や支援者のおかげです。何度も諦めかけたけど、無罪になったらマイカーを買って両親をいろんなところに連れて行きたい」と時折、涙をぬぐいながら語った。同席した西山さんの弁護団長、井戸謙一弁護士は「