【解題】 フランス文学科一年、乾亜沙美さんが選んだ素材は自殺ネットのネットアイドル、南条あやだった。読まれるとおり、その分析は緻密な展開をみせている。そして自殺念慮が高く、それを決行に移してしまった南条あやにたいし、「痛ましさ」を覚える終始一定の距離が、乾さんの文章の倫理性を高めてもいる。 乾さんは、ネットアイドルという座についてしまった南条あやの、演技意識、自己欺瞞を、最初、見事に証拠立ててくる。「女子高生」「リストカッター」という彼女へのラべリングは、短期間での彼女への欲望集中を促がしたが、その欲望を消沈させる自己吐露を南条に不可能にさせもした。その結果が、彼女に存在していた恋人の秘匿だった――その彼との仲が幸福を約束されればされるほど南条あやは自己矛盾にいたる。それが結局は彼女の自殺決行の主因だった――乾さんの論旨は、そのように伸びてゆく。そのスリリングな展開は実際に下のレポートを読