わたしは心が弱い人間だ。 心を動かされると、それに囚われて精神が壊れる。 心を動かさないこと 心が動くものに近づかないこと 考えないこと 行動しないことは わたしなりの、自分を守る防衛術だ。 子どもの頃の、一番最初の夢は、看護婦さんになることだった。 病気の人や怪我の人を助けてあげたいと思った。 だけど、小学2年生のとき読んだ伝記『ナイチンゲール』。 野戦病院で、麻酔のない中、足を切断しないと助からない兵士。 布をかませ、全身を押さえつけ、のこぎりで足を切る。 その行為が、その兵士を助けるために必要だとわかっていたとしても、わたしにはできない、絶対にできないと思った。 わたしは『ナイチンゲール』を読んで、看護婦さんになる夢をあきらめた。 次になりたかったのは獣医。 わたしは小さなころから、動物が人一番好きだった。 だけど 獣医になるためには、その過程で、たくさんの動物を殺さなければいけない