福島第一原発事故の直後、私はアメリカのメディアにかかわる知人から、「なぜ日本人は二度も原爆を受けながら、アメリカからもらった原発技術で日本列島を覆ってしまったのか」と問われた。私は即座に「死の灰」を浴びたことと深い関係があると答えた。 1954年、日本漁船・第五福竜丸がビキニ環礁でアメリカの水爆実験に遭遇。乗組員23人が被曝し、うち1人が死亡した。同年、水爆で生まれた怪獣が暴れ回る映画「ゴジラ」が制作された。全国に原水爆禁止運動と反米感情が巻き起こると、アメリカは原子力の平和利用を掲げて、57年、東海村に「原子の火」を“贈与”。63年には原子力で動く正義のロボットが活躍する「鉄腕アトム」がアニメ化された。これ以降、日本の子どもの中に「ゴジラ=原爆・戦争」と「鉄腕アトム=原発・平和」が同居するようになった。 こうした心象を、評論家加藤周一は、「比喩的に言えば、原子爆弾とは制御機構の故障し