ケン・ローチ (1936年〜) は、一貫して労働者階級に焦点を当てた作品を製作し続ける、イングランド生まれの映画監督・脚本家です。1967年に映画監督デビュー、第二作目の「ケス」(1969年)で英国アカデミー賞作品賞と監督賞にノミネートされますが、社会問題への市民の関心の低さや政治的な検閲が原因となり、1970年代から1980年代にかけて長い不遇時代を過ごします。 「SWEET SIXTEEN」(2002年) 第二次世界大戦後のイギリスでは、主に労働党政権によっていわゆる「ゆりかごから墓場まで」と言われる高福祉政策がとられてきましたが、規制や国営企業による産業保護政策が国際競争力を低下させ、経済成長が停滞、「英国病」と呼ばれる状況に至ります。1979年にマーガレット・サッチャーを首班とする保守党政権が誕生すると、国営の水道、電気、ガス、通信、鉄道、航空などの事業を民営化、経済に対する規制緩