「メチエ」は、経験によって培われた熟練の技を意味するが、専門性を捨てて現場に向かうとする臨床哲学の表現媒体に対し、なんとも逆説的なタイトルをつけたものだと我ながら思う。臨床哲学の最初の10年間において、この『メチエ』は、形式や伝統に囚われない自由な表現を追求する場であり続けた。未熟、未完成なものをそのままて??大学という場に位置しながらも、形式化や洗練化への誘惑に負けることなく、こうやって、『臨床哲学のメチエ』は復刊する。しかも、若い学部生や大学院生の手によって。未成熟であることを恥じず、古い課題も新しい挑戦も、どれも飽きずに繰り返し、さまざまな実践をさまざまな表現へと翻訳すること、それが私たちのメチエなのだ。 ~ メチエ vol.17 本間直樹 巻頭言より