桜が咲き始め、家具屋やホームセンターが新生活を始める人で賑わうこの時期、思い出す出来事がある。 あれは短大最後の春、私は博多にある電力会社のビルの一室にいた。 「すみません。親が病気になったので就職をやめさせてください」 入社式を3日前に控えた3月の終わりだった。私の前に座っていた人事部のおじさん2人の顔が引きつっていた。おそらく社内での配属も決まり、研修の準備も完璧に終わっていたことだろう。なのに入社式の3日前になっていきなり「やっぱりやめる」と言い出した輩がいるのだ。 バブルの後半で、まだ就職は売り手市場だった。けれどさすがに天下の電力会社への入社を(入社3日前に)断る人間が出てくるとは想像していなかったようだ。 担当者は、 「まあ...親御さんがご病気なら仕方ないですよね...」 どうしようもない、やれやれ、という顔で私を眺め、やはり引きつった顔で見送ってくれた。親の病気とかいう見え
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