福井総裁が就任したとき、「速水共和国から福井帝政へ」という記事を書いたことがある。私が日銀ウォッチを始めた97年春、福井氏は副総裁として日銀の実権を握っており、98年春の日銀法改正時の総裁昇格が確実視されていた。当時から福井氏はカリスマ性が強く、幹部らは「福井さんはこう思っている」、「福井さんはそれには反対だ」とか、やたらと福井さん福井さんと言っていた印象があった。福井“カリスマ”副総裁を慮るゆえに福井さんの虚像が多数発生する現象、私は密かに『たくさんの福井さん症候群』と名付けた。 翌年、営業局汚職事件が発生。福井副総裁は松下総裁と共に去り、事態収拾のために清廉潔白の人物と目された速水優氏が総裁に就いた。日銀マンにとってはカリスマ性がなかったのが幸いし、さらに「マル卓」消滅によって日銀内の言論は自由闊達になった印象を受けた。経済環境に恵まれず、政策運営は冴えなかったが、旧法時代に比べると行