写真に残る人々の姿を、時の流れの順に並べてみる。 写真に残る呉の町並みの1軒1軒を、通りごとに分類して、番地順に並べてみる。 そんなふうにして並べることを繰り返して、浸り込む。感触を味わえるまで眺め回してみる。そんな空間から這い出てみると、今のこの世の中がちょっと時代がズレてしまっているように感じられたりして不思議だ。自分が一体どっちの「世界」に生きているのだか浮世離れしてしまっている。 などという作業をひたすら行って、物語のある本も読まない映画も見ない生活をしばらくつづけてしまった。『花は咲く』だとか、いったん別の仕事の方に離れてしまうと、「あの世界」が遠ざかって、細かな感触が思い出せなくなってしまっている。 アメリカのSF作家コニー・ウィリスの「ブラックアウト」とその続編「オール・クリア」という本(邦訳は大森望訳、早川書房刊)を手にとってみる。これはタイムマシンが発明された時代の史学生