ひとりで過ごした休日の夜 至福のバスタイムで脱力し 少しぼーっとしたあたまで この一年にあった出来事を ひとつずつ思い出していた 楽しかったこと 嬉しかったこと いっぱいあったはずなのに たくさんあったはずなのに ずっとずっと覚えていたいのに 絶対に忘れたくなんかないのに うまく思い出せなくなっている それなのに もう二度と思い出したくないこと もう忘れてしまいたいことだけを どうしてこんなに覚えてるのかな この軀に纏わり付いた泡と一緒に 水と一緒に流れて消えればいいのに 大好きだったひとの笑った顔さえも うまくは思い出せないわたしなのに あと少しで一年が終わってしまうというのに 忘れたいものは 絶対に忘れられないんです。 村上春樹