アフター・アース AFTER EARTH 2013／アメリカ／G　監督：Ｍ・ナイト・シャマラン　出演：ジェイデン・スミス／ウィル・スミス／他　原案：ウィル・スミス 　シャマラン監督の新作。結構な事である。吉事である。慶事である。つて、3回も強調したのには理由があって、世間には蕎麦にアレルギーがある人が如きに、シャマラン、という名前にアレルギーがある人も居るからで、どうしてかそういう人に限って「『シックス・センス』だけの一発屋」「Yahoo!映画では低評価」「みんながシャマランつまらないって言っているからつまらないんだと思う」等と、まるでシャマラン映画を観ていないような事を言っている事例が多々観測されるのだけれども、まあ、そういう人ばかりでもないのじゃよ、という事を主張／唱道するがために、やったー、わーい、嬉ション出そう、と言祝いでみたのであり、もう一言、ばぶー、と付け加えると、顔面の筋肉を

リアル ～完全なる首長竜の日～ 2013／日本／G　監督：黒沢清　出演：佐藤健／綾瀬はるか／他　原作：乾緑郎 『完全なる首長竜の日』 　山菜蕎麦をばちゅるちゅる手繰りつつあると、たまに現実離れをしたような気分になって、その乖離の内に「南イタリアのヨアキムという人は～～」と、水木しげるの貸本でしか知らないような千年王国説を一節打ちたくなったりするのだけども、こう、自我と現実が乖離するのは何も蕎麦を食っている時だけ、というわけでもなく、幽体離脱をしたら眠っている自分が見えた、だとか、トイレで用を足したる後、紙が無いのに気付いた時であるとか、現実と超現実の境があやふやになる事例というのは割とたくさんあって、他人が豚にしか見えなくなった時はどうしようかと困ったものじゃよ。 　黒沢清という監督は、そうした超現実／非現実感を描くに安易な宥和を図らぬ人と見えて、廃墟や曇天（水）といったモチーフを用い、不

レプリカ　 IN THEIR SKIN （REPLICAS） 2012／カナダ／　監督：ジャレミー・パワー・レジンバル　原案：ジョシュ・クローズ　出演：ジョシュ・クローズ／セルマ・ブレア／レイチェル・マイナー／他 　隣家の業突婆ぁが人の夕食時を狙って「お醤油貸して下さいな」と来やがる。「貸して」も何も、返ってきた事ぁ無えんだけども、そこは義理と人情、浪花節を気取るわけではないが吝嗇を気取って拍手喝采とも行かないので、お醤油を、つつ、と差し出すのが処世というもので、だけども、業突婆ぁは境界線上の人なので、「あらまお安いお醤油使っているのね」とか何とか言いながらちらちら人の部屋にガン飛ばして、ぶほほ、って帰って行く。乃公、脳内にわかにかき曇り、怒気がごろごろ言うものの自分ちで当たり散らして後悔するのは自分なので、酸っぱい顔をして一膳飯を食う。 　……なんつうのはマシな方で、何と比較してマシと言

孤独な天使たち IO E TE （ME AND YOU） 2013／イタリア／G　監督：ベルナルド・ベルトルッチ　出演：ヤコポ・オルモ・アンティノーリ／テア・ファルコ／他　原作：ニッコロ・アンマニーティ 『孤独な天使たち』 　マルグリット・デュラスが自身の評論の中で、「付き合い難い人は、孤独が下手糞なの」と述懐しており、割と独りで蹴鞠を蹴ったり、漢詩を吟じたり、雪隠を詰めたりするのが好きなわたしもよく分かったような、分からなかったような、初めて海鼠を見た原始人の如き顔になって、いま目の前に万物の創造主が顕現して、「孤独か多数の人間に揉みくちゃにされるかどちらか選び給へ」と言われても、ちょっと返事に困るなぁ、て、思ったりもするも、困ってばかりで時間を稼ぐのは無為な滞留というものなので、答えを見つけるべく映画などを観たら観たらで、ああ孤独だ、この人は孤独でしょう、ってえ人間が真に孤独であった事

バレット BULLET TO THE HEAD 2013／アメリカ／R15+　監督：ウォルター・ヒル　出演：シルヴェスター・スタローン／サン・カン／他　原作：マッツ／コリン・ウィルソン 『Bullet to the Head』 　80年代で最もオシャレなアクション映画であるファイナルファイ……じゃなかった、『ストリート・オブ・ファイヤー』のウォルター・ヒル監督と、未だ老いを感じさせぬビッグネーム、スライことシルヴェスター・スタローンがついに手を組んだグラフィック・ノベル原作のドンパチアクション、と来りゃあ、此は重畳、重畳と観に行くのはひと、にんげんとして当然の行為であって、そこに晦渋などというものは無いのであり、むしろ後続を鞭撻せねばならぬのである。 「殺し屋と刑事が組んで巨悪に立ち向かうぞ。観やれ」と。 　ほで、本作のストーリーは殺し屋と刑事が組んで巨悪に立ち向かうというものなのだが、斯

コズモポリス COSMOPOLIS 2013／フランス／カナダ／R15+　監督：デヴィッド・クローネンバーグ　出演：ロバート・パティンソン／他　原作：ドン・デリーロ 『コズモポリス』 　殻、というものが嫌いだ。蟹を食するには殻を剥くなんてえ手間をかけないといけないし、そもそも殻を持つ生き物があまり好きではないし、「自分の殻に閉じ籠る」つう言い様もポジティブな意味では使われぬ。殻。それを嫌いすぎるあまり一度などは抗議の割腹自殺にて果てようかとも思ったのだけども、臓腑がぼどぼど出てくると何かそれも殻を剥いた後の何らかが連想されて嫌であるし、殻なぞに庇護されて惰生を貪る低級生物のために死ぬるのはひととして、にんげんとして、少しく間違っていると思い直し、息子のブランドンも映画監督デビューして何かと花柳界を騒がせたるクローネンバーグの『コズモポリス』を観に行ったのであるが、かかる作品を観てわたしは、

トールマン　 THE SECRET （THE TALL MAN） 2012／アメリカ／カナダ／フランス　監督：パスカル・ロジェ　出演：ジェシカ・ビール／ジョデル・フェルランド／スティーヴン・マクハティ／他 　田舎、というものは兎角嫌なもので、卑近な例を挙げれば乃公が住まう田舎も医師が居らず、地図に載っていなく、旅人などが迷い込んで来ようものなら村民総出で「祟りじゃー！」と大合唱、四十六時中旅人を監視した挙句、恐れをなして山に逃げ込んだ旅人を松明持って山狩りをし、これを土着の神に捧げるなどするのである。 　ところで斯様な田舎に根付き、糸電話と伝書鳩で通信行為を行なっておる乃公はついぞ最近知ったのであるが、ちまたではスマートホンとフェースブックというものが猛威を奮っておるらしく、この田舎にもその魔の手が伸びてきた。極めて酸っぱい顔をしながらパソコンという魔法の箱でそれを閲覧してみたるところ、「

ライク・サムワン・イン・ラブ　 LIKE SOMEONE IN LOVE 2012／日本／フランス　監督：アッバス・キアロスタミ　出演：奥野匡／高梨臨／加瀬亮／他 　以前、とある女性に、「貴女はクール・ガールだ」と言おうとしたところ、生来の舌足らずのため、「貴女はコール・ガールだ」と言ってしまった事がある。 　刹那、その女性は機械的な、というか鉱物的な無表情になったかと思うと、唾を吐き、踵を返し、わたしの前から去って行った。今生の別れであった。 　斯様に人はすれ違うものであるが、すれ違ってばかりでは生活・労働・ブログの更新などに不便を来たす事これ間違いなく、が故に、人は便宜的にでも人と人との関係性を措定し畏み、これを奉じるのである。 　齢80を過ぎたる元大学教授が、独り身を嘆き、デートクラブを介してコール・ガールっつうかデリバリーヘルスを呼ぶという所業も謂わば関係性に対する未練とでも言うべ

デス・レース３　インフェルノ　 DEATH RACE 3: INFERNO 2012／アメリカ／オリジナルビデオ　監督：ロエル・レイネ　製作：ポール・Ｗ・Ｓ・アンダーソン／ロジャー・コーマン／他　原案：ポール・Ｗ・Ｓ・アンダーソン　出演：ルーク・ゴス／ヴィング・レイムス／ダニー・トレホ／他 　ロジャー・コーマン製作『デス・レース2000年』のリブート新シリーズである『デス・レース』の最新作……と、ここまで書いて頭脳に痒みを覚えたので、頭をぽりぽり、つと弊ブログの記事を読み返して見やると一番最初の『デス・レース』（自分の感想はこちら）について触れたのが4年前、そん次の『デス・レース2』（自分の感想はこちら）に触れたのが2年前、と、前世で大変な罪でも犯したのか、2年おきに『デス・レース』シリーズについて触れており、何故ゆえに斯様な因業な事をしておるのか、このままでは『デス・レース』シリーズにブ

BADコミュニケーション 2013／日本　監督：小栗はるひ　出演：田中龍都／他 『どんずまり便器』（自分の感想はこちら）の小栗はるひ監督作第2弾“青春H”シリーズ第28弾。 　本作を観、わたしが思い出するはハタチ前後の甘酸っぱい青春、なんつう嘘を吐くと死後、森羅殿という所で閻王様にやっとこで舌をずっぽり抜かれてしまい、それは痛そうで嫌なので、かしこみ申し上げますると、はな、一緒にお風呂に入ったり、はな、うぇいうぇい言いながらボディタッチを繰り返したり、はな、酒精を摂取しながら意味／意義の無いワカモノコトバで応酬したり、といった青春はわたしの青春とはパンデモニウムとアラボトほど離れておるし、人間関係の構築も、一応意思の疎通ができる人材のみを選んでしてきたつもりなので、本作に於ける若者たちのコミュニケーション、これは一般的に想起される「ワカモノ」の平均を採って描かれたものであるのかな、と思い、

チキン・オブ・ザ・デッド／悪魔の毒々バリューセット POULTRYGEIST: NIGHT OF THE CHICKEN DEAD 2013／アメリカ／R18+　監督：ロイド・カウフマン　製作総指揮：パトリシア・スウィニー・カウフマン　脚本：ガブリエル・フリードマン　出演：ジェイソン・ヤチャニン／ケイト・グレアム／ロイド・カウフマン／他　 　今年の暫定ベスト1映画。 　わたしは、こと映画に関しては超党派たりえたいと思っているし、そのためにならどんな映画に対しても言葉を尽くしたいと常々考えている（『モスクワ・ゼロ』とか以外）。つて、格好を付けたって襤褸が矢絣に変わるわけでもねえ。思っている。考えている。所存である。ショゾーン。つうだけなら政治屋だって臀部を揺すぶりながら言っているのであるからして、ひと、にんげんとして、無聊退屈を厭う者として、言葉を尽くす、この行為を実行せねばならない。 　然

少年は残酷な弓を射る　 WE NEED TO TALK ABOUT KEVIN 2012／イギリス／PG12　監督：リン・ラムジー　出演：ティルダ・スウィントン／ジョン・Ｃ・ライリー／エズラ・ミラー／他　原作：ライオネル・シュライバー 『少年は残酷な弓を射る』 『少年は残酷な弓を射る』。タイトルから察するに、恐らくは、少年が残酷な弓を射る話なのであろうと思っていたら、やっぱり少年が残酷な弓を射たので、HAHAHA、乃公の勘もまだ衰えずや、何しろ乃公は『英国王のスピーチ』という観てもいない映画の内容を「英国の王様がスピーチをするんでげしょ」と喝破した程の、ここまで書いていて涙が出てきた。かかる涙。これが何に拠るものかというと、邦題の心無さや停滞、これではまるで少年が残酷な弓を射るだけの前衛映画と勘違いされてしまうのではないのか、という老婆心、心配性から成るもので、さする短絡や先入観を乃公は望

悪魔の毒々モンスター＜ノーカット無修正完全版＞リバイバル THE TOXIC AVENGER 1984／2013／アメリカ／R18+　監督：マイケル・ハーツ　製作・撮影：ロイド・カウフマン　出演：ミッチェル・コーエン／マーク・トーグル／アンドリー・マランダ／他　 　もしも時間を逆行する事が出来たなら、過去の自分を、まあ、手斧や金槌で、とまでは行かなくとも、げんこつでぽかりとやってしまいたいというような、そんな切なさ、恥、といったものは多くの人が抱え続けているだろう。 　少しく思い返してみても、でんべべ節を唄っていたら、「それ、ずんべべ節だよ、阿呆」と真顔で窘められたり、脳漿を絞り上げるようにして書いた現地グルメレポートを、「はは、これは優れた松本清張だね。火サスの脚本でも狙っているのかい？」とゴミ箱に放り投げられたり、穴があったら入りたいというか、顔を真っ赤にして削岩機で穴を掘りたくなる恥

The Lords of Salem　（日本公開未定） 2013／アメリカ　監督・脚本：ロブ・ゾンビ　出演：シェリ・ムーン・ゾンビ／メグ・フォスター／他　 　春日の陽気に当てられつ、ずびずびと釜揚饂飩を啜っていたら、インターホンがぴんぽーん、ぴんぽーん、なんつて、人を召喚せしめやがる。 　で、玄関に行くでしょう。相手が武装強盗／異常者でない事を念じりながら玄関のドアを開けるでしょう。はな、そこに立っていたのは魔女の宅急便。つっても、箒と猫を従えた黒頭陀のキキではなく、むしろそんな期待をしていた方が阿呆なのだけども、作業着のお兄さんが、春だからか、満面の笑みで「はいこれ」とブツをこちらに手渡し去ってゆく。何が魔女の宅急便じゃこの大木瓜がっ、と言いたくもなりましょうが、魔女、の主語は、陽気な配送員のお兄さんではなく、そこから手渡されたブツにかかっておるのであって、そのブツこそが此度紹介致したく

ザ・ウーマン　飼育された女　 THE WOMAN 2012／アメリカ　監督：ラッキー・マッキー　出演：ポリアンナ・マッキントッシュ／他　原作：ジャック・ケッチャム／ラッキー・マッキー 『ザ・ウーマン』 　ジャック・ケッチャムの食人3部作の〆、映画としては『襲撃者の夜 食人族 the Final』（自分の感想はこちら）の続編に該当する映画なのであるが、些かに不明瞭な部分があるにせよ、いきなり本作から観始めても別に進退窮まるような事も無かろうと思うので、連番作品を逆順から観ないと発作で死ぬる人や、『完全なる飼育』か何かと間違えて観てしまった人にも間口の広い作品であると思われる。 　食人族最後の生き残りである少女が川で水浴みをしているのを見かけたサイコパス弁護士が発奮、少女を捕えると家宅の物置に連れ帰り、家族一同とサディズム溢るる飼育を愉しむというお話。 　俗にこういう行為を符丁で「誘拐」「拉致

ラストスタンド THE LAST STAND 2013／アメリカ／R15+　監督：キム・ジウン　出演：アーノルド・シュワルツェネッガー／他　 　アーノルド・シュワルツェネッガー主演、というだけでいそいそと観に行ってしまうのは宣伝に乗せられているようでもあるし、『ターミネーター3』以来10年ぶりの復帰作、とは言い条、先の『エクスペンダブルズ2』（自分の感想はこちら）にもシュワちゃんは出演しておったので、そんなに久しぶりな再会でもなく、やあ会いに来たよ、つって、逆にしらこい目付きで見られたらどうしよう、というような妄想を拠とした蟻走感がないでもなかったのだけど、まあ、ブギーなリズムを口ずさみ、飽くまでもフランクなフリをしてシネ・コンで、「『ラストスタンド』を1枚ブギー」と言ったところ、チケ売り場のお姉さんに随分と奇妙な顔をして見られた。 　逃亡する麻薬王へ対する最後の砦として立ちはだかる老保安