「助手席で鳴り続けていた携帯電話を止めようと手を伸ばした時です。やっぱり酔っていたんですね。何百回とマイカー通勤していた道でしたが、バランスを崩して縁石に乗り上げると目の前に人影が…。ドーンという鈍い衝撃と同時にフロントガラス全面にヒビが入って視界は真っ白に。『あぁ、人生終わった』と思いました」。 忘年会帰りの飲酒運転で人身事故を起こした吉野博次さん(仮名、事故当時28歳)が、「飲酒運転の撲滅に役立つなら…」と、封印したい過去の記憶をひもといて、その瞬間を克明に語ってくれた。 被害者は重傷。吉野さんは留置所に送致されて取り調べを受け、手錠につながれたまま護送車に乗り込んで、事故現場で実況見分。身元引受人として訪れた親は“半狂乱”だった。地元紙でも報じられたため、勤務先の金融機関は懲戒免職が決定的となり、依願退社の手続きを取った。支店の同僚と同期がささやかながら開いてくれた送別会では、酒を口