(この記事は「あるドイツ人の戦後(上)」からの続きです。) ――ご両親とはどういうことを議論なさったんですか? H:僕が知りたかったのは、父がどういう役割を演じたのか、彼はどういうふうにそれに参加したのか、どの程度ナチスの体制を理解していたのか、でした。それに対する彼の答から僕はある程度知ることが出来ました。父とはそういう話がまだ出来たんです。でも、母は一切聞きたくないと言い、「ばかなことばっかり言わないで。社会主義者のふりなんてしないで」と言うばかりで、完全に僕とは反対の立場に立った。 父はとにかく僕に答えようとしてくれ、兵士の役割というもの、兵士の道徳というものについて、将校の道徳というものについて語り、政治的な話はしたことがありませんでした。それが先ほどお話ししたようなことだったのです。 当時のドイツにおいて、社会的には完全に、公的にそういった議論がなされることはありませんでした。そ